セブンイレブンがおにぎりの消費期限を2倍にするニュースが出ていましたね。
狙いは食品ロスの削減です。
消費期限が2倍に延びると、おにぎりの廃棄は5割減るとされています。
食べられぬまま捨てられるおにぎりが減り、食品ロスという環境問題だけでなく、自社の経営改善にもつながります。きっとどの企業も、食品の保存期間は長いほうが助かるのではないでしょうか。
セブンイレブンは保存料を使用しないことをウリにしていますので、エシカルな動きが盛んな企業かもしれませんね。
さて、では、なぜセブンイレブンは保存料を使用しないのでしょうか?
今日は、保存料についてまとめていきます。
保存料とはなにか
保存料とは、食品の腐敗や変敗の原因となる微生物の増殖を抑制し、保存性を高める添加物です。
製造中の微生物の繁殖を防ぐものであって、調理や加熱過程での微生物の増殖は抑えることはできません。殺菌剤とは異なり、殺菌効果はありません。
主な保存料の種類ついて
ここでは、主な保存料について紹介します[1]食品衛生の窓『3 保存料』URL:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuten/hozonryo.html(最終閲覧日2020年12月29日)。
安息香酸、安息香酸ナトリウム
水によく溶け、微生物の増殖を抑制します。食品のpHが低い(酸性が強い)ほど効力を発揮します。
- 清涼飲料水
- シロップ
- 果実ペースト
- 果汁
- マーガリン
ソルビン酸、ソルビン酸カリウム(ソルビン酸K)
ソルビン酸は、ナナカマドの学名 Sorbus commixta から名付けられました(ナナカマドと呼ばれるバラ科の落葉高木の未成熟の果実の中に存在します)。
現在は、化学的に合成されたものが主流です。水によく溶け、カビ、酵母、細菌と幅広く効果があるため、様々な食品に使用されています。
- チーズ
- 魚肉ねり製品
- 魚介乾製品
- 食肉製品
- つくだ煮などの煮物類
- 漬物類
プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム(プロピオン酸Ca)、プロピオン酸ナトリウム(プロピオン酸Na)
自然界にも微生物の代謝産物として存在し、みそ、しょう油、パン生地、ぶどう酒、チーズなどの発酵食品に含まれています。
カビや芽胞菌(耐熱性の細胞を作る細菌)の発育を阻止する働きがあります。
- チーズ
- パン
- 洋菓子
ポリリジン(ε-ポリリジン)
放線菌という細菌の一種の培養液を精製してつくられます。ほとんどの細菌、酵母に対して有効ですが、カビにはあまり効果がありません。
- デンプン系の食品
しらこたん白抽出物(しらこたん白、しらこ分解物、プロタミン、核蛋白)
サケ科サケの精巣(しらこ)の中にあるプロタミンやヒストンという特殊なタンパク質を取り出したものです。ネトと呼ばれる微生物が増えることによって生じるネバネバの発生を遅くする効果があります。
- 魚肉ねり製品
- 調味料
なぜ、保存料を使わなければならないのか?
保存料は、着色料や発色剤のように見た目をよくして消費者の食欲や購買欲を促進するものではありません。また、甘味料や調味のための目的でもありません。
その分、企業の理念や考え方が反映される添加物のひとつといえます。
保存料を使う企業側メリットは、大きく分けて3点あります。
- 食品の腐敗や変敗によるクレームを避ける
- 保存期間が延びるため、製品のロスを減らすことができる
- 保存期間を延ばすことで、運搬や輸送に役立ち、販路を広げられる
経営的な判断を考えれば、保存料を使い、全国展開などの可能性が広がる側面があるかもしれません。
また、消費者にとっても賞味期限が延びて利用しやすくなるメリットがあります。
本当に保存料が必要なのか?
本来、長期間保存できないものを、保存料を添加することで長続きさせる。一面、便利さを兼ね備えてますが、必要以上に多用することは、好ましい状況とは呼べません。
食品添加物が認可されてから、まだ年月は浅く、人体による影響はまだ解明できていません。
現在認可されている食品添加物が、明日には取り消されている可能性もあります。
どういう形に進むかわからない食品添加物について、一人ひとりの向き合い方が今後も問われてくるでしょう。
セブンイレブンが実施検討中の「窒素充填」とは?
近年では、包装技術が発達し、保存料を使用しなくても食品を長期間保存できる方法が増え始めてきました。
そのひとつが、記事にも取り上げられていた窒素充填。
取り立てて新しい方法ではありませんが、保存のあり方のひとつとして紹介します。
食品の劣化の原因の一つとして、酸化(酸素による劣化)があります。
これは、りんごに例えるとわかりやすく、りんごを切ったまま放置すると空気中の酸素と触れて、りんごの色が茶色くなりますよね?
この酸化によって、味が落ちたり、風味が落ちたりします。
このような酸化を防ぐ方法の一つとして、窒素充填があります。
酸素の入る隙間に、窒素を埋めてしまおうという原理です。窒素は、無味無臭無色の気体で、体積で空気中の五分の四を占めているため、体に影響はありません。
こうした技術を活用することで、食品の保存期間や衛生管理は、益々向上していくでしょう。
さいごに
食品添加物は、科学や技術の力の発展により生まれた産物であることは間違いありません。その解決方法もまた科学や技術の力なのだろうと感じる次第です。
「食品添加物は安全だ」「食品添加物は悪だ」と色々な意見があります。実際、日本の食品添加物は1400種以上あり、食品添加物をひとくくりに善悪を語ることはできません。消費者が一人ひとり意見を持ち、選択していくことが、大切になるでしょう。
「食品添加物はなんとなく嫌だから摂りたくない」「でもどうやって選んだらいいかわからない」といった声をよく聞きます。そういう時のひとつの判断軸としては、裏表示の原材料の数が少ないほうを選んでください。裏表示に長々と原材料が書かれているものより、短くシンプルに書かれているものです。これで絶対安心というわけではありませんが、意識的に食品添加物の摂取を減らすことができます。
もし可能であれば、自分がわからないカタカナ食材が入っているものは買わないようにすると、より食品添加物の摂取を控えられるでしょう。
References
↑1 | 食品衛生の窓『3 保存料』URL:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuten/hozonryo.html(最終閲覧日2020年12月29日) |