自分でできる健康チェック

血液検査結果の見方|血液データからわかる自分自身の健康度チェック(栄養アセスメント)

血液検査の各項目の意味

血液検査の各項目の意味についてみていきます[1]公益社団法人日本人間ドック学会『血液検査[2]国保中央病院『血液検査結果の見方[3]駒込病院血液検査結果の見方について[4]一般財団法人予防医学協会『血液検査

肝機能の検査(肝臓と関係する項目)

肝臓は、様々な物質の代謝や合成に重要な臓器です。肝機能の障害は、肝臓で合成されるものが減ったり、肝臓の細胞が壊れて細胞中の酵素が血液中に増えることで診断します。

総蛋白(TP)

血液中の総たんぱくの量を表します。数値が高い場合は、脱水状態による血液の濃縮、慢性炎症、多発性骨髄腫、グロブリン蛋白異常など、数値が低い場合は栄養障害、ネフローゼ症候群、肝臓障害などが考えられます。

アルブミン

血液蛋白のうちで最も多く含まれるのがアルブミンです。肝臓で合成され、血清総蛋白の約60%を占めています。

数値が低いと、肝臓障害、ネフローゼ等腎障害、慢性消耗性疾患などの全身の栄養状態が反映されます。

AST(GOT)

ASTと、後述しているALTは、アミノ酸を作るのに必要な酵素です。この2つの酵素は肝臓にたくさん存在するため、肝臓の細胞がダメージを受けて壊れると血液中に漏れ、値が高くなります。

AST(GOT)は、心臓、筋肉、肝臓に多く存在する酵素です。
数値が高い場合は、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝臓がん、アルコール性肝炎、心筋梗塞などの心臓疾患などが疑われます。

GOTのみが高い場合は心筋梗塞、筋肉疾患などが考えられます。

ALT(GPT)

ALT(GPT)は、肝臓に多く存在する酵素です。

ASTとALTの両方が高いとき、あるいはALTのみが高い値の場合には、肝障害の可能性が高くなります。

γ-GTP

γ-GTPは、肝臓や胆道に異常があると上昇します。また、アルコールやお薬を摂取すると反応するため、飲酒量の多い方が上昇しやすい数値です。

数値が高い場合、アルコール性肝障害、慢性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害が疑われます。

ALP

身体のほとんどの臓器に含まれている酵素ですが、主に肝臓、胆管、骨、胎盤など存在する酵素です。肝胆道疾患、骨の病態などをチェックします。

LDH

各種臓器に広く分布し、心疾患、肝疾患、悪性腫瘍、白血病などで上昇します。

総ビリルビン

赤血球には寿命があり毎日少しずつ壊れていますが、その際に、ヘモグロビンが分解されて生じるものがビリルビンです。ビリルビンが作られてから排泄されるまでの過程のどこかに障害があると、血液中のビリルビンが増加し、黄疸の症状がでます。

数値が高い時は、肝臓や肝胆道系疾患、溶血性貧血、新生児などが考えられます。

心機能の検査(心臓と関係する項目)

心臓は、全身に血液を送るポンプの働きをしており、安静時で通常60~80回/分程度、規則正しく収縮しています。心筋が障害されると心筋細胞に含まれる酵素が血中に増加します。

CK

骨格筋、心筋、脳、平滑筋など広く分布しており、数値が高い場合は、これらの臓器の障害を反映します。

CKーMB

心筋由来のCKを表します。心筋梗塞の早期診断に有用です。

腎機能の検査(腎臓と関係する項目)

腎臓は、血液中の老廃物を濾過して、尿中に排出します。腎機能が低下すると、心臓で濾過できなかった老廃物が血液中に増加します。

尿素窒素(UN)

たんぱく質の最終分解産物です。血液中のUNは腎臓で排泄されるため、腎機能が低下すると、値が増加します。

クレアチニン(Cr)

アミノ酸の一種であるクレアチンが代謝されたあとの筋肉の老廃物です。そのため、筋肉量が多い人は自然と値が高くなります。腎臓から排泄されるため、腎臓の機能が低下すると、血液中の値は増加します。

尿酸(UA)

尿酸は、身体の細胞の核にあるプリン体が壊れてできるものです。数値が高いと、腎機能障害、痛風、関節炎などを引き起こします。慢性的に尿酸値が高いと、動脈硬化を起こす危険性があります。

血糖の検査(糖尿病と関係する項目)

血糖値は、糖尿病などの状態をみるために必要です。慢性的に血糖が高いと、全身の血管内皮が障害され、血行が悪くなり、様々な臓器の障害を引き起こします。

血糖(Glu)

血液中のブドウ糖量で、空腹時は低く、食後に上昇します。その他、運動、喫煙、ストレスなどによっても大きく変動します。

数値が高いと、糖尿病、副腎皮質や甲状腺など内分泌異常、妊娠、ストレスなどが考えられます。

グリコヘモグロビン(HbA1c)

ブドウ糖とヘモグロビンが結合したものを、HbA1c(グリコヘモグロビン)といいます。HbA1cは、約120日は安定するため、過去1〜2か月の長期間の血糖がうまく調整されているかどうかを知ることができます。

脂質の検査(高脂血症と関係する項目)

HDLコレステロール

コレステロールとは、体の細胞膜やホルモンを合成するのに必要な成分です。食べ物から取り入れたり、肝臓や小腸でつくられます。

HDL型とLDL型があり、血液中の余分なコレステロールを肝臓に運ぶのがHDLーコレステロールで「善玉コレステロール」と呼ばれています。

動脈壁に付着したコレステロールを回収し、再び血液中に洗い出す働きがあるため、数値が少ないと、動脈硬化の危険性が高まります。

LDLコレステロール

細胞にコレステロールを運ぶのがLDLーコレステロールで「悪玉コレステロール」と呼ばれます。

LDLコレステロールが多いと、血管壁に蓄積して動脈硬化を進行させ、心筋梗塞脳梗塞を起こす危険性を高めます。

中性脂肪(TG)

体内の中で、もっとも多い脂肪で、糖質がエネルギーとして脂肪に変化したものです。使われず余った分は、皮下脂肪や肝臓に蓄えられます。食後に血液中の値が上昇するため、食前に採血します。数値が高いと、内臓脂肪の増加、脂肪肝、脂質異常症、肥満、過食、糖尿病などの危険性が高まり、低いと低栄養などが考えられます。

炎症の検査

肺炎、膀胱炎などの炎症性疾患の診断に役立ちます。

CRP

体内で炎症反応や組織の破壊が起きている時に、血中に現れるタンパク質です。炎症性疾患で鋭敏に上昇し、病態の改善後は低下するため、病態の診断、予後の判定、治療効果の観察に役立ちます。

血液細胞(白血球、赤血球、血小板)の検査

血液細胞は、主に赤血球系、白血球系、血小板系の3種類に分けられます。

赤血球

赤血球は肺で取り入れた酸素を全身に運び、不要となった二酸化炭素を回収して肺へ送る役割があります。数が増えすぎると細い血管を詰まらせる原因になり、少なすぎると酸素が運ぶ量が減り、ふらついたり、息苦しくなります。

血色素

血色素とは赤血球に含まれるヘムたんぱく質で、酸素の運搬役を果たします。減少している場合、鉄欠乏性貧血などが考えられます。

ヘマトクリット

血液全体に占める赤血球の割合をヘマトクリットといいます。数値が低ければ、鉄欠乏性貧血などが疑われ、高ければ多血症、脱水などが考えられます。

白血球

白血球は細菌などから体を守る働きをしています。数値が低い場合は、ウィルス感染症、薬物アレルギー、再生不良性貧血などが疑われます。

血小板

血小板は、出血したとき、その部分に粘着して出血を止める役割を果たしています。
数値が高い場合は、血小板血症、鉄欠乏性貧血などが疑われ、低い場合は再生不良性貧血などが考えられます。

さいごに

会社や学校などで定期的に行われる健康診断は、自分自身の健康度合いの成績表です。

数字だけみるとわからない部分も多いかと思いますが、数字の意味を理解することで、自身の健康増進に役立てることができます。健康診断をやって終わりではなく、やってから自分の生活習慣に生かしていきたいですね。

ぜひ、健康診断の結果が届いた時に、このページを活用してみてください。

【基本】予防食学7か条予防食学7か条 腹八分目が最高のダイエット 自然のもの、自然に近いものを食べる 多様な食材を、よく噛んで味わう ...

 

References

1 公益社団法人日本人間ドック学会『血液検査
2 国保中央病院『血液検査結果の見方
3 駒込病院血液検査結果の見方について
4 一般財団法人予防医学協会『血液検査
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ABOUT ME
髙橋菜里(管理栄養士・食養家)
しょくすり運営者。食が豊かになれば人が豊かになる、人が豊かになれば社会が豊かになるを信念に、食からはじめる健康管理(=予防食学)を発信しています。「大切なひと・もの・ことを健康にするお手伝い」を仕事としており、サイト管理運用をはじめ、商品やレシピの開発、食と健康講座、講演、電子書籍、コラムの執筆など幅広く活動中。著書に「がんばらないおせち」