ビタミンときいて、何をイメージしますか?
肌にいい? 身体にいい?
ビタミンには、身体の調子を整える作用があり、人間が健康に生きていく上で、大切な栄養素になります。ビタミンは、大きく水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンに分かれ、ひとつひとつのビタミンに役割があります。
今日は、水溶性ビタミンについて、学んでいきましょう。
水溶性ビタミンとは?
水溶性ビタミンとは、その名の通り、水溶性のビタミンということ。つまり、水に溶けやすいビタミンのことですね。
水に溶け、多量に摂取すると、体外に排泄されるため、過剰症になることはあまりありません。水に溶けやすく熱に弱いため、水に浸して長時間置いたり加熱をしすぎるのは避ける必要性があります。
ビタミンB1の栄養学
ビタミンB1は、糖質がエネルギーになるときに必要な栄養素で、体内の疲労物質の燃焼、神経機能の正常化などの役割をもっています。
豚肉 肝臓(レバー) 卵黄 胚芽米 米糠 ナッツ
ビタミンB1が不足すると(ビタミンB1欠乏症)、
- 脚気
- 疲労感
- 食欲不振
- 便秘
- 浮腫
- 知覚鈍麻
- 心臓障害
- ウェルニッケ脳症
などの症状がみられます。ビタミンB1の過剰症はありません。
ビタミンB2の栄養学
ビタミンB2は、たんぱく質や脂質、炭水化物をエネルギーに変えるときに必要で、目、皮膚、口の中の粘膜などの機能を保つ役割ももっています。
レバー うなぎ 卵 乳製品 納豆
ビタミンB2が不足すると(ビタミンB2欠乏症)、
- 口角炎
- 口唇炎
- 舌炎
- 皮膚炎
- 目の充血
などがあげられます。ビタミンB2を多く摂りすぎた時の(ビタミンB2過剰症)、健康障害はないとされています。
ビタミンB6の栄養学
ビタミンB6は、ネズミの抗皮膚炎因子として発見され、一般的には「ピリドキシン」と呼びますが、「ピリドキサール」「ピリドキサミン」もビタミンB6の効力をもっています[1]林淳三編著『Nブックス基礎栄養学』pp103-104,建帛社。
レバー 白米 米糠 豆類 かつお まぐろ バナナ
ビタミンB6は、腸内細菌によって合成されるため、欠乏症は起こりにくいです。
ただし、抗うつ薬や経口避妊薬などで欠乏症が引き起こされる場合があります。
- 脂漏炎
- 口角炎
- 貧血
- てんかん発作:神経伝達物質(γ-アミノ酪酸の合成が阻害されるため)
ビタミンB6欠乏症は、尿中キサンツレン酸排泄量から診断することができます。
また、ビタミンB6過剰症は、ほとんど起こりませんが、長期間大量に摂取した場合に
- 知覚神経障害
- シュウ酸腎臓結石
などの症状がでます。
ビタミンB12の栄養学
ビタミンB12は、動物や植物は合成できず、合成できるのは放線菌などの菌になります。そのため、食材に付着している微生物を食べることによって、ビタミンB12を体内に取り入れています。
レバー 卵黄 牡蠣 あさり さんま にしん
ビタミンB12が不足すると(ビタミンB12欠乏症)、
- 悪性貧血
- 全身倦怠感
などが起こります。ビタミンB12は、尿中に排泄されるため、過剰症はないとされています。
ビタミンCの栄養学
ビタミンCは、抗壊血病の因子として発見されました。たんぱく質の一種であるコラーゲンの生成に必要な栄養素で、コラーゲンは、細胞を結合させ、筋肉や皮膚などを丈夫にする役割があります。
体内でのたんぱく質や脂質の酸化を防ぐ抗酸化作用が高く、ホルモン生成や鉄分の吸収を促進します。
レモン みかん アセロラ 柿 苺 じゃがいも 緑茶
ビタミンCが不足すると(ビタミンC欠乏症)、
- 壊血病
- メーラー・バロウ症
が挙げられます。ビタミンCの過剰症はほとんど知られていません。
ナイアシンの栄養学
抗ペラグラ因子として発見されたナイアシンは、糖質代謝、脂質代謝、アミノ酸代謝に不可欠な栄養素です。
レバー 牛乳 卵 たらこ かつお 落花生
ナイアシンが不足すると(ナイアシン欠乏症)、
- ペラグラ:皮膚炎
- 食欲不振
- 胃腸障害:下痢など
- 知覚障害
- 精神異常
になります。
ナイアシンを多く摂りずぎると(ナイアシン過剰症)、
- 消化管障害
- 肝臓障害
などが考えられます。
ビオチンの栄養学
ビオチンは、酵母の生育に必須な因子として発見されました。脂肪酸の合成に不可欠な栄養素です。
レバー 牛乳 卵
ビオチンは、欠乏すると、皮膚炎や体重低下など挙げられますが、腸内細菌によって合成されるため、通常の食生活で欠乏症になることはほとんどありません。
ビオチンの過剰症は、とくにありません。
パントテン酸の栄養学
酵母の成育因子、ニワトリヒナの抗皮膚炎因子をして発見されたパントテン酸は、動物に必須の栄養素です。動物性・植物性食品に広く分布しており、腸内細菌によって合成されます。
にじます いわし 豆類 穀類 卵 鶏もも肉
パントテン酸が不足すると(パントテン酸欠乏症)、
- 成長停止
- 食欲不振
- 皮膚炎、皮膚障害
などが挙げられます。
パントテン酸は、余剰分は体外へ排泄されるため、過剰症はとくにありません。
葉酸の栄養学
DNAの合成に不可欠な栄養素で、緑黄色野菜、レバーに多く含まれています。
赤血球をつくることに関与しているため、貧血予防にも重要です。細胞増殖がさかんな胎児の発育に大切なため、妊娠中は不足しないよう注意しましょう。食品中の葉酸は、長時間加熱によって分解されてしまうため、手早く調理することが大切です。
レバー 卵黄 ブロッコリー ほうれん草 枝豆 菜の花
葉酸が不足すると(葉酸欠乏症)
- 巨赤芽球性貧血
- うつ病
- 口角炎
- 舌炎
などが挙げられます。
葉酸の過剰摂取による健康障害はありません。
ビタミンU(水溶性ビタミン様物質)
キャベツの絞り汁から発見された抗潰瘍因子で、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防に効果があるといわれています。
さいごに
ビタミンは、身体の調子を整えていく上で、大切な栄養素です。とりわけ、水溶性ビタミンは、体外へ排出されてしまうため、こまめに摂取する必要があります。また、水に溶けやすく加熱に弱いため、生で食べたり、加熱は短時間で済ませるなどの工夫が必要です。
これらのビタミンを全て覚えて食べるということは難しいかと思います。「まごはやさしいこ」を意識して食べると、自然とバランスよく食事づくりができます。ぜひご活用ください。
References
↑1 | 林淳三編著『Nブックス基礎栄養学』pp103-104,建帛社 |