行事食

冬至の栄養学 〜 今日はなに食べたらいい? 〜

今日は冬至ですね。

1年が経つのも、あっという間だなぁ・・・としみじみ思います。

 

冬至は、1年で1番太陽が出ている時間が短い日で、冬至を境に、今度は夏至までだんだんと日が長くなってくる(=陽のパワーが強まってくる)ことから、心を切り替えたり、物事を始めたり、新たなスタートに適した日なのだそうです。もともと、冬至を初めとする至点(春分、夏至、秋分、冬至)は、季節の変わり目を意識するためにあるようです。

冬至は、太陽の力が再び甦る日、陰の気から陽の気に転じて運気が上昇する日とされ「一陽来復」とも呼ばれています。

年末にも差し掛かっていますし、来年のイメージを書いたり話したりするのに、ちょうどよいタイミングといえます。

冬至にはなにを食べたらいいのか?

冬至の七種

冬至の日に食べる食べ物は、地域によって様々です。一般的には、冬至の日には、「ん」が付く食べ物を食べると、運が呼び込めるとされています。

これは、「運盛り」と呼ばれ、運が高まり始める日に、もっと「運」を呼び込むために、「ん」の付くものを食べようという験担ぎから来ています。そんな運を味方につける「冬至の七種」と呼ばれているのが、こちらの七種です。

  • なんきん:南京(かぼちゃ)
  • れんこん:蓮根
  • にんじん:人参
  • ぎんなん:銀杏
  • きんかん:金柑
  • かんてん:寒天
  • うんどん:饂飩(うどん)

運盛りは、験担ぎだけでなく、栄養をつけて、冬を乗り切るための先人たちの知恵でもありました。

また、「ん」には、「いろはにほへと」から始まるいろは47音が「ん」で終わることから、一年の終わりを表し「一陽来復」へ通じるという意味も込められているそうです。

南瓜

運盛りの一つとして、有名なのは「南瓜(なんきん=かぼちゃ)」ですね。運が「陰(北)」から「陽(南)」へ向かう意味も込められています。

昔の日本では、冬至の頃になると、秋野菜の収穫は終わってしまい、保存の効く野菜は少なく、冬に食べられる野菜はほとんどありませんでした。南瓜は、切らずに丸ごとのままなら長期保存が利くので、食べ物に困る冬の貴重な栄養源として重宝され、寒い冬を無事に乗り切れるようにと願いを込めて大切に食べられてきました。

南瓜は、粘膜を保護するカロテンやビタミンB群が豊富に含まれており、中風(脳卒中)や風邪の予防にも効果的です。

小豆

小豆のような赤色の食べ物は、邪気をはらうとされ、節目や祝事の席で、親しまれてきました。冬至に食べる小豆粥は「冬至粥」とも呼ばれ、煩悩を清め、冬至の翌日から運気が上昇するよう願いが込められています。

小豆の主成分は、デンプンとたんぱく質になります。疲労回復効果があるビタミンB1を多く含み、小豆の皮にはサポニンと呼ばれる成分が含まれています。これは、利尿効果を高めてむくみを改善したり、便通の促進、解毒作用による二日酔いの改善などにも効果があります。忘年会などが重なる時期にぴったりの食材ですね。

先ほど挙げた「南瓜」と一緒に炊き込んだ「いとこ煮」を食べる地域もあります。

こんにゃく

こんにゃくは、古くから「お腹の砂おろし」といい、体内にたまった砂を出すために、こんにゃくを食べるという習慣があります。冬至以外にも大晦日、節分、大掃除の後など体内の毒素(老廃物)を出して、体内を清めるために食べられています。

こんにゃくには、不溶性の食物繊維が豊富に含まれ、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、腸内の老廃物を吸着して排泄し、腸内の環境を整えてくれる働きがあります。

ゆず

冬至の夜は柚子湯に入るとよく聞きますが、その由来はいくつかあります。

  1. 「柚子」は「融通」がきく、「冬至」は「湯治」の語呂合わせ
  2. 柚子の実は実るまでに長い年月がかかることから、苦労が実りますようにという願い
  3. ゆずの木は寿命が長く、病気に強いため、ゆずにあやかり、ゆず湯に入ることで無病息災を祈る
  4. 香りの強いものは邪気を寄せ付けないとされており、冬至の日には、明日からの陽の気を取り込む前に、柚子の香りで邪気を祓って身を清める
  5. ゆず湯は、血行を促進して湯上り後の体温の低下を緩やかにしてくれる[1]缶詰技術研究会『食品と容器 ユズの香気成分とその機能性』URL:http://kangiken.net/backnumber/5509_bknum.pdf(最終閲覧日2020年12月25日)
  6. クエン酸やビタミンCによる美肌効果
  7. ゆずに含まれているリモネンは抗酸化作用があり、疾病予防に役立つ[2]缶詰技術研究会
     

などさまざまな効果が期待されています。

1年に1回の冬至を食で楽しもう!

たしか中国の冬至は、餃子を食べるというのも聞いたことがあります。国によって様々ですが、どれも縁起を担いでいたり、風習にならって食べていたものが、実は栄養価の高いものであったり、意味のある食べ方をしていたのだなと感じます。

今日はぜひ、冬至ならではの食べ物を食べながら、ゆったり来年のことを考える1日にしたいですね。

 

References

1 缶詰技術研究会『食品と容器 ユズの香気成分とその機能性』URL:http://kangiken.net/backnumber/5509_bknum.pdf(最終閲覧日2020年12月25日)
2 缶詰技術研究会
ABOUT ME
髙橋菜里(管理栄養士・食養家)
しょくすり運営者。食が豊かになれば人が豊かになる、人が豊かになれば社会が豊かになるを信念に、食からはじめる健康管理(=予防食学)を発信しています。「大切なひと・もの・ことを健康にするお手伝い」を仕事としており、サイト管理運用をはじめ、商品やレシピの開発、食と健康講座、講演、電子書籍、コラムの執筆など幅広く活動中。著書に「がんばらないおせち」
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